一期一会


        日に何度もPCを開いては
        溜め息をつきながら、また閉じて…
        『後編』が、なかなか書き出せないでいました。
        でも、今夜こそは。

        今回、仙台に出掛けたもうひとつの理由は
        実は、どうしても訪ねたい場所があったから。
        石巻にあるその場所で、自分なりの慰霊を…
        そう思いながら、交通手段を探すのですが、一方で
        何も出来ないのに被災地に向かっていいのかとも考える…
        そして、散々迷って決めたのは
        海の見えるところで、そっと手を合わせる、でした。

        ホテルのフロントに話をして、バスで海に出られないか訊ねると
        親切に対応して下さり、『蒲生』行きのルートを案内してくれました。
        一番近いのは『荒浜』だと娘から聞いていたのですが 
        レンタカーはひとりでは不安だし、バスは無いとの事でした。


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        しかし…
        教えられた所で、発車20分前から待つも、何故か不安に… 
        私以外、他に並ぶ人がいないのです。 
        隣の石巻行きも、その隣も、長い列が出来ているのに。
        1時間に1本のバスなのに、どうして…

        もし、もっと早く誰かに訊ねていたら乗らなかったのですが
        そうすると、この先の一期一会にも繋がらない。
        人の縁は不思議なものだと思います。


                       *


        出発間際に、ようやく数人の方が乗り合わせ、走り出したバス。
        でも、ひとり、またひとりと途中下車する度、また心配に。
        とうとう、最後の乗客になってしまい、海も全然見えて来ない!
        どうしよ~です。

        思い切って最前列シートに移動し、信号待ちのタイミングで
        運転手さんに話しかけてみると~ 何と!!
        『蒲生』は津波に襲われて、町の全てが失われてしまった事!
        だから、バスもそこまでは行かない事!
        さらに、タクシーなども走ってなく、海には出られそうにない事!
        途方に暮れる、とんちんかんな乗客(私)を慰めるように
        丁寧に教えてくれました。

        理由を聞かれたので、震災で亡くなった大勢の方のご冥福を
        手を合わせ静かにお祈りしたくて、と伝えました。
        運転手さんは、「そ~ですかぁ。それはそれは、有難うございます。」
        と、返して下さって…
        そして、私が戻るには、このまま折り返すしかないとの事でした。


                       *


        終点は、海ではなく、被災された方が暮らす仮設住宅の前。
        運転手さんはこちらでトイレをお借りしていると話し、
        出発までの時間調整と乗車時間を考えると1時間位…
        私も一緒にと、案内をして下さいました。

        バスを降りて、歩き出すと…優しい笑顔と穏やかな語り口のまま
        実は、ご自身も被災者で、別の仮設住宅にお住まいなのだと言われ、
        「心配して下さって」と、また気遣いの言葉を口にされるのです。
        バスに乗る前には、自販機でお茶を買って勧めても下さいました。
        ご自宅は全て流され、ご両親も犠牲になってしまったそうです。

        私はといえば、恐縮し、お話をさせて頂きながら泣けてきて。
        温かいお人柄に、感謝と切なさでいっぱいになりながら        
        帰りのバスの中、心の中で合掌させて頂きました。

        短い時間の出来事ですが、忘れられない一期一会でした。





          
by dimages | 2012-08-20 02:07 | オフタイム
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